住まい・インテリア

2012年2月 6日 (月)

東日本大震災漁村の復興について

 昨年3月11日に発生した東日本大震災から10ヶ月が経過した。まもなく1年がこようとするのに、国も地方行政もなんら本格的な復興計画を提案できないこの国の体たらくはなんとしたことか!いくら千年に一度という大地震でも、被災者にとってはたまったものじゃない。

我々、阪神大震災を経験した者にとって歯がゆいことこの上ない。思えば当時の神戸市政は、見事なものだった。阪神大震災も都市直下型大地震として世界を震撼させた。ビルや高速道路が倒壊し、戦火のような火災が都市を襲った。

そうした状況のなかでも神戸市は、震災発生から2ヶ月あまりの3月には全市の復興計画を提案した。あまりにも早い復興計画に、批判的な論評をくわえる専門家もいたくらいである。

確かに整然とした都市計画の完了とともに、被災者の再建が追いつかないという現象があるにはあるが、あの大規模な復興計画がなければ、神戸のまちは現在のように甦ってはいないだろう。

と、今年に入って仲間たちとずっと憤慨していたが、最近ネットを開いてみて大方の被災地で昨年12月に復興計画が出始めていた。実に9ヶ月かかってやっとと言う感じである。

私も一度だけ寄せてもらった石巻市は、「石巻市震災復興基本計画~最大の被災都市から世界の復興モデル都市石巻を目指しつつ、絆と協働の共鳴社会づくり~」という、大層なネーミングで126ページに及ぶ復興計画を打ち出している。

ざっと目を通したが、かなり細部まで検討した状況がうかがえる。ただ、津波がきた低地には人が住まうことを止めるという雰囲気である。高台への「集団移転計画」みたいな方向を目指している。

真野まちづくり相談役が支援している宮城県亘理町の海岸線荒浜という広大な平野には、「住宅は建てるな」と行政は言っているらしい。

東北の海岸線では大昔から何度も津波にやられているから、先人の知恵で「ここから下に家をたてるな!」という石碑がたくさん残されているとかがよく報道されているが、本当にそれが正しい復興計画であろうか?

東日本大震災の特徴は、福島第一原発の問題もあるが(今回の震災で一番深刻で困難な問題)、青森から茨城まで、まさに日本の北半分の海岸線が津波にやられたということである。だからこそ、震災復興計画で住居をどこに建てるのか?防潮堤をどうするのか?産業などをどうするのか?について明確な方針を立てられないのである。

ここで私の考え方を述べてみる。

まず津波に襲われたほとんどの地域の産業が漁業であるという普遍性をもっている。そのことを念頭においた復興計画を立てなければならない。

 日本国内には2914の漁港がある。それらは港の重要度の順に、①特定第3種漁港(13港)、②第3種漁港(101港)、③第2種漁港(496港)、④第1種漁港(2205港)、⑤第4種漁港(99港)と資料にはある。

北海道が長崎県についで多く、285港ある。(長崎286港)

東北青森、岩手、宮城の3県で345港ある。しかも特定第3種漁港は、全国13港のうち3港も持っている。つまり気仙沼、石巻、塩釜の3漁港である。特定第3種漁港とは、利用範囲が全国的なもので、かつ、漁業振興において特に重要な漁港であるとされている。

青森から千葉まで大小の漁港を合計すると485ある。そのうち70パーセントの漁港が被災にあったとして、実に340地区くらいの漁港が津波にやられたことになる。現在、復興計画がネットに載せられているのは約50箇所。特に小さな漁港の復興計画は遅れていないのか気にかかる。

津波の被害を受けた地域が圧倒的に漁業を産業としているということを念頭においた復興計画が必要である。漁業が港から離れて(海岸線から離れて)成立するはずがない。だから漁業活動は従前の場所で再建するしかないし、そこに働く人も多くは港に近いところに住むのが合理的である。

ところが国は、津波のきたところへは住居を建てるなという。あるいは盛り土をするとか、高台を切り開いて集団移転などという。ナンセンスである。

私のプランはこうだ。スケッチにもしてみたが、

① 漁業関係の施設は、従前の海岸線に建設するしかない。船も岸壁も従前のままである。千年に一度の大津波を想定した巨大防波堤は不必要。しからば津波がきたらどうするのか?逃げるだけである。この地方の住民は逃げることを知っている。逃げるしかないのである。工場など漁業関連施設が流されるのは仕方がない。

② 次に住民が住む住宅はどうするのか?

 戸建てをあきらめて10階から20階の集合住宅にする。そして1階から3階くらいまでは、壁が外れるような構造にし、津波がきたら住宅の下を流すようにする。そこは駐車場でもいいし、漁業関係の工場でもいい。(今回の大津波でも、鉄筋建造物は流されなかった)

  住宅の一部分、例えば屋上とか中間階に避難者を受け入れる広場をつくる。(屋上なら野菜菜園・花畑、中間階ならイベント広場、研修広場など)

  津波が発生したら離れた高台まで逃げずとも、高層住宅の中に逃げ込めばいい。

  金持ちで戸建ての豪邸の欲しい人は、高台に建てればいい。

③ それでも観光客の受入や、平時のまちのにぎわい、あるいは神社などの祭もあるだろうから、簡易な商店街の形成やイベント広場もつくる必要がある。ただ、万が一津波が来た場合、そこはあきらめて高層住宅に逃げるしかない。

④ 石巻とか気仙沼、塩釜みたいな大規模な漁港と違って小さな漁村でも、国は巨費を投じた防波堤を作るよりも、津波に流されない強固な住宅を建設することこそ先決である。

  漁業でしか生活できない町村では、まず住民が安心して住める住宅と、漁業が再開できる港湾設備、および漁船購入に要する補助金の制定が必要だと思われる。 (S生)

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